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フィンランドの森の物語 [おすすめシネマ]

6年も前に公開された映画のDVD.
積読本ならぬ、積読ビデオになっていたのをようやく観た。
クラウス・ハロ監督・脚本の『ヤコブへの手紙』。

75分という短い映画ながら、フィンランドのアカデミー賞の最多4部門を受賞し、アメリカのアカデミー賞外国語映画賞にも出品された作品。

静かな映画である。
主要な出演者もたった3人。
フィンランドの片田舎の森に一人で住むヤコブ牧師と刑務所から恩赦で出所した女性レイラ。それに、毎日ヤコブ牧師に手紙を運ぶ郵便配達人の3人だけ。
それぞれが個性的。

時代は70年代。
12年間刑務所暮らしをしていたレイラは、仕事と住まいを提供してくれるというヤコブ師のもとをバスではるばるたずねていく。
湖のほとりに立つ教会からさらに、森の中を歩いてたどり着いたのは、白樺の木々に囲まれた古ぼけた家。
迎えてくれたのは年老いたヤコブ師1人。
彼の目が見えていないことにレイラは気づく。
彼女に課せられた仕事は家事ではなく、ヤコブ師に悩める人々から毎日届く手紙を読み上げ、それに返事を書くというものだった。

嫌々ながら仕事をこなすレイラ。
いかにも70年代の服装をした、だらしなく太った中年女性を演じるカーリナ・ハザードという女優さんが、無表情の中にいかにも長い刑期を刑務所で過ごしていた人と思われるふてぶてしさと狡猾さをにじませて、うまい。
なにしろ、手紙を読み上げるほか、ほとんどセリフはないのだ。

案の定、届いた手紙を黙って捨ててしまうレイラ。
毎日、自転車で手紙を届けに来る郵便配達人は、刑務所帰りのレイラに不審と警戒の念を抱くが、身体のでっかいレイラにとても太刀打ちできない。
レイラとやせて小柄な郵便配達人のやりとりも面白い。

そんな中、突然、手紙が配達されなくなる。レイラは郵便配達人を追いかけ、問いただすが、「来ないものは来ない」と言って逃げていく。
手紙が来なくなったヤコブ牧師はふさぎ込み、日に日に身体が弱っていく。
レイラはヤコブ師が教会に行っている間に黙って出て行く決心をして、タクシーを呼ぶ。
そして、タクシーに乗り込んで「どこまで?」と運転手に問われて愕然とするレイラ。
タクシーは去っていく。
言葉はないのだが、レイラにはここよりほかに行く場所がないのだということがヒシヒシと伝わってくる。

やがてレイラは、届いた手紙を読むふりをして、自分の秘密を語り始める…。
そして、ヤコブ牧師がなぜ恩赦を受けたレイラを引き取ることにしたのか、その秘密も明かされる…。
ここで号泣(私)。

その後の展開を記すのは、控えておこう。

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ヨーロッパの映画の面白さ [おすすめシネマ]

フィンランドと言えば、今、オープンダイアローグという地域に展開する家族療法的アプローチで日本の医療福祉関係者の間では一躍有名になっている国。

そのフィンランドの生んだ映画監督といえば、アキ・カウリスマキ。
いつか見たいと思っていたが、今回、遅ればせながら、初めてDVDで彼の作品『ル・アーヴルの靴磨き』を見た。

2011年のカンヌ国際映画祭国際批評家協会賞、パルム・ドッグ審査員特別賞、同年シカゴ国際映画祭グランプリ、同年ルイ・デリュック賞などを受賞した作品。

ちなみに、パルム・ドッグ(PALM DOG)賞とは、Wikipediaによると、カンヌ国際映画祭で上映された映画の中で優秀な演技を披露した1匹またはグループの実写、もしくはアニメーションの犬に贈られる賞とのこと。
その名称は、同映画祭の最高賞であるパルム・ドールに由来する。受賞した犬(たち)には、革の首輪が贈られるのだそうだ。
この年、パルム・ドッグの受賞犬は、『アーティスト』のアギー。
たしかに、アギーには負けるかも。強敵だったわね。

ル・アーヴルは南フランスの港町。
主人公マルセルは路上で靴磨きをしている。
しかし、道行く人々の足元を見ると、ほとんどスニーカーで、革靴などはいている人はほとんど見当たらず、毎日の収入はほとんどない。
近所の店のツケで買い物をして、やっと生計をたてている。
家には愛する妻と愛犬ライカがいて、貧しいけれど幸せな毎日を送っていた。

★ ★ ★ ★ ★

犬の名前、ライカは1988年のスウェーデン映画、ラッセ・ハルストレム監督の『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』に登場する主人公、イングマル少年の愛犬のライカ犬にちなんでいるのだろう。

ライカ犬と言えば、かつてアメリカと宇宙ロケットの開発競争をしていたソ連が打ち上げた小さな人工衛星に乗せられて、世界で最初に宇宙を旅した生物となったのがライカ犬である。
イングマルの母親は病気で、父親は仕事で南洋の海に出かけたまま帰ってこない。
そんな状況でもイングラムは、あのライカ犬の運命を思えば、自分はまだましだと考えているのだ。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「ル・アーブル」の話に戻って・・・
ある日、近くで何者かがピストルで殺されるという事件が起き、マルセルは靴磨き仲間のベトナム人と一緒に逃げ出す。どうやら人身売買をめぐる抗争があるようだ。
港に放置されたコンテナから、大勢のアフリカからの密航者が見つかる。

一方、マルセルの妻が突然倒れ、入院した病院で余命宣告を受けるのだが、夫には秘密にしてほしいと医師に口止めする。
そんなこととは知らないマルセルは、密航した少年が港に隠れているのを見つける。
少年は、ロンドンにいる母のところに行こうとして、祖父とコンテナに乗っていたのだ。
今や警察に追われる身の少年をマルセルは匿い、近隣の人々とも協力して祖父を探し出し、旅行費を工面しようとする。
追跡する警察・・・。果たして少年はロンドンに行けるのか?

と、まあこんな話である。
最後はびっくりするような結末なので、ここに書くのは控えるが。

すぐに気づくのは、正面から顔をアップにしたショットが多いこと。
あきらかにカウリスマキが尊敬しているという小津安二郎の影響が見て取れる。
人々の生活ぶりの描き方、雰囲気も、小津風である。

これと同じような手法が、英国とイタリアの合作映画『おみおくりの作法』でも見られた。
この映画の監督・脚本・製作を担当し、第70回ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ部門で監督賞を受賞したウベルト・パゾリーニも小津安二郎の大のファンで、小津の映画を意識して作ったというから、小津がヨーロッパの映画人に与えた影響がいかに大きなものだったかが分かる。

『ル・アーヴル』の中ではライカ犬だけでなく、登場人物の名前がいろいろな過去の映画にちなんでつけられていたり、
『おみおくりの作法』でもあるショットが『ほくの伯父さん』で有名なジャック・タチ監督へのオマージュとなっているなど、
過去の映画を自分の作品に積極的に反映させようとしているのは、興味深い。
普通だったら、真似だとか、ひどい場合は盗作だとかの非難を受けかねないだろうから。
どういうメッセージなのだろう。
インターネットの時代、映画の先行きが危ぶまれるから?

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たまには日本の映画も [おすすめシネマ]

最近は、ほとんど日本の映画を観る機会がないが、CTVで『ふしぎな岬の物語』を放映していたので、録画してみた。
確か、千葉の海っぺりに実在する喫茶店が舞台だと聞いていたので、関心はあったのだ。
主演の吉永小百合が企画に加わっているということも、2年前に公開された時から話題だった。

ところが、である。
このブログのカテゴリーとして映画については「おすすめシネマ」というカテゴリー名しか作っていなかったので、仕方なくそうしたが、実際は「おすすめしないシネマ」だった。

だって、紙芝居みたいなんだもん。(と、こちらも子供っぽい口調になる)
ぴあ映画生活のサイトでも、「おゆうぎかいみたいな映画」というコメントがあって、やっぱり!と思った。
夜中にレジの金を盗もうと侵入した男に向かって、吉永小百合が「どろぼうさん」なんて呼びかけちゃうところで、もう耐えられなくなって観るのを中止した。

こんな脚本で、俳優たちもよく出演しようという気になったもんだ。
脚本が脚本なので、演技もおのずと「おゆうぎかい」みたいになる。
あの米倉斉加年の最後の出演作というのも泣ける。もちろん情けなくて。

この映画をわざわざ作ろうとした人たちは、「ほのぼの」「心温まる」というのが好きなのかもしれないけれど、それが涙+笑いという単純な発想に堕してしまっている感じ。
でもこれでは、泣けないし、笑えない。
なんだか観客として馬鹿にされた感じさえする。こんなレベルだと。

ビデオ録画だから、途中でやめることはできるけれど、これをわざわざ時間とお金をつかって観に行った人はホントに気の毒だったなと思う。
こういう映画評は新聞にもなかったし。



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ニュー―エイジ・インド映画も面白い [おすすめシネマ]

今年最後のブログは、お正月を家で寝て過ごすという私のような人のための”おすすめシネマ”をご紹介。

たまたまTVをつけたらやっていたのが、このインド映画。
『マダム・イン・ニューヨーク(原題:English Vinglish)』。
新人女性監督ガウリ・シンデ―による2012年の作品。トロント国際映画祭をはじめ、世界各国で公開され、称賛されました。

いわゆる”ボリウッド映画”ですが、インド独特の土着のエネルギーに満ちた歌と踊りの映画とは少し違います。
舞台もニューヨークですし、社会への問題提起を含んだ、いわゆる”ニュー・エイジ”のボリウッドといっていいでしょう。
社会といってもインドだけではありません。世界中どこにでも通じる、普遍的なテーマを含んでいます。

なんでこれを視ようと思ったかというと、主役の女優さんがあまりに美しかったから。
シュリデヴィという、インドでは超有名な女優さんだそうですが、結婚と子育での15年間のブランクを経て、この映画で衝撃的なカムバックを果たしたのだそうです。
ブランクが15年と聞いて驚きますが、年齢は49歳だそうです。全然そうは見えません。

彼女の演技は゛インドのメリル・ストリープ”、優雅さは”インドのオードリー・ヘップバーン”と称されているそうです。日本だとさしずめ吉永小百合といったところでしょうか。
彼女が演じるシャシは、夫と子供に尽くすのが務めと信じているインドの平凡な主婦です。
お菓子を作るのがうまく、自家営業でお菓子を売る仕事も細々としています。

そんな彼女のニューヨークに住む伯母の娘が結婚式を挙げるというので、夫から手伝いに行くよう言われて、シャシはニューヨークへ飛んでいくのですが、言葉が通じないことで大いに傷つく体験をします。

また、夫や子供たちにまで、英語が話せない古いタイプの女性と、あからさまに馬鹿にされ、「なぜそんな扱いを受けなければいけないの?」と憤懣をいだいています。
でも、何も言い返せません。
たまたまバスの車体に描かれた4週間で英語が学べるという語学学校の広告を見て、シャシはそこに皆に隠れて通うことを決意します。

語学学校には、ホモセクシュアルの講師、メキシコ人のナニー、パキスタン人のタクシー運転手、中国人へアスタイリスト、タミール人のソフトウェア・エンジニア、ものを言わないアフリカ系の男性、そしてローランというフランス人シェフがいました。

みなそれぞれの文化背景をもっていますが、言葉を学びたい、コミュニケートしたい、馬鹿にされたくないといった動機は一致しています。
シャシは、その真剣な学習態度としっかりした考え方で、クラスのみんなから一目置かれる存在になっていきます。シャシも手作りのインドのお菓子をふるまいます。

なかでも彼女の美しさに魅せられたローランは、同じ食べ物に関わる者どおしとしての関心から、やがて彼女を真剣に愛するようになり、告白したのですが・・・。

夜は映画のDVDで英語を学ぶシャシを見て、年下の姪がシャシの秘密に気づき、応援してくれるようになりました。
一方、最後に、5分間のスピーチをかきあげ、みんなの前で発表するという最終試験が課せられることが分かりました。でも、その日は、姪の結婚式の日です。お菓子を作るという大きな役割が待っています。

最終試験を諦め、自分の務めをあくまで果たそうとするシャシ。
そこへ、語学学校のみんなが駆けつけます。
姪がシャシに皆と同じように英語でスピーチをするようにと促し、シャシは躊躇しながらも立ち上がろうとした瞬間、夫が変わって立ち上がり、妻は英語ができないからと代弁しようとします。
それを押しとどめ、立ち上がるシャシ。

彼女は、家族とは安心して愛し合い、互いに弱点をあざ笑ったりせず尊重しあう、確執があるときも話し合って理解しようとする、と結婚の良さを英語でとつとつと語り、参加者の胸を打ち、夫も母を馬鹿にしていた娘もふりかえって後悔します。
語学学校の講師が最終試験の合格を告げます。

そして、大団円はボリウッド映画らしく、全員による派手な音楽とダンスの饗宴。

この映画は、監督自身の体験に基づくストーリだそうです。
彼女自身、子供の頃、やはり英語が話せない母親のことを馬鹿にしていたというのです。その贖罪の意味を込めての映画でした。

こうした世代間の文化葛藤は、英語がグローバル言語となった世界中で起きているように思います。
ヨーロッパでは小学校から英語で授業が行われたりしていて、若い人はほとんど流ちょうに英語を話せます。
ところがそうした教育を受けていない中高年の人に、街角で英語で話しかけても、無視されてしまいます。私も最初は、アジア人だからと差別しているのかと思ったのですが、友人に聞くと、英語ができないのでコンプレックスがあって、無視するのだということでした。

また、この映画にあるように、世界の一部では女性に教育を受けさせない社会が多くあります。
映画は、その批判にもなっているのです。

でも、この映画の素敵なところは、何も英語を学ぶこと、言葉をがすべての解決になるわけではないということも、きちんと示しているところです。

シャシとフローランが語り合うシーンでは、シャシがインドのタミール語(か何か)で語る一方、フローランはフランス語で語るシーンがあります。
それぞれの思いを乗せた言葉は、言葉としてはわかりあえないのですが、十分気持ちは伝わっていくのです。
もちろんすれ違い、分かり合えないときもあります。
それがなんだというのでしょう。
そう、監督は言いたいように思います。

考えさせられた後、でもきっとこれから何かいいことがあるさ、と幸せになれる予感がする映画でした。


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