So-net無料ブログ作成
本とテレビ番組 ブログトップ

久々のリーバス警部 [本とテレビ番組]

まとまった読書の時間がとれなくなって(定年退職したのに、おかしなことだけど)、
ハヤカワのポケミスを読む機会がめっきり減った。
寝る前に読むには重くて、字が小さすぎるのだ。
そして、ひさびさ手にしたのが、イアン・ランキンのスコットランドはエジンバラを舞台にしたリーバス警部シリーズ『寝た犬を起こすな』。

リーバスもいつの間にか定年退職して、いったんは民間人となったが、迷宮入り事件の再調査に参加した(『他人の墓の中に立ち』・・・これを読んだかどうか記憶がない)後に、正式に復職した。
だが、もはや警部ではなく、部長刑事だ。
かつての部下、シボーン・クラークが今は上司(警部)である。
そこに新たに警察の内部監察室(苦情課)に所属していたマルコム・フォックスが、組織の改編で犯罪捜査課に異動になり、シボーンのチームに加わる。

英国のEU離脱によりスコットランド独立の機運が盛り上がっているのは知られているが、スコットランド警察の8管区もまもなく統合されて、ポリス・スコットランドとなるのだそうだ。ロウジアン&ボーダーズ警部本部の本部長もイングランドの新しい役職に異動するなど、警察組織が大きく揺らいでいる最中である。

ちなみに、本書に登場するフォックス警部補は、ランキンのもう一つのシリーズとなっているキャラクターである。
ルールに従わず、自由奔放に捜査を進める一匹狼リーバスに対して、警官の内部規律違反に目を光らせる立場だったフォックスという、敵同士といってもよい間柄の二人がどうやってチームを組むことができるのか。
だが、フォックスのいた内部監察室も、同じ警察官でありながら、他の仲間に忌み嫌われる存在だったので、こちらも一匹狼ではあるのだ。
そこが本書の面白いところである。
その間に入って、ヤキモキするシボーン警部。

さらにスコットランド司法次官として、スコットランド法曹界のトップに就任したエレノア・マカリが、なにやらフォックスに何事か意を含ませている様子だ。

リーバスとシボーンが手掛けることになったのは、エジンバラ空港からほど近い田園地帯の道で起きた自動車事故である。
意識不明で発見されたのは、ジェシカ・トレイナーというエジンバラ大学の学生。果たして本当に彼女が運転していたのか・・・。
実は運転していたのではないかとリーバスらが疑う彼女のボーイフレンドは、スコットランドの法務大臣の息子だった。スコットランドは英国から独立すべきだと主張している政治家だ。
一方、ジェシカの父親も、ロンドンの実業家でロンドン警視庁の上層部に知り合いがいるという。なにやら政治絡みのきな臭い匂いが。

やがて、この事件が過去の警察の闇の部分へとつながっていく。
実は、犯罪捜査課に異動してきたフォックスは、新任司法次官のマカリからある事案の捜査を頼まれていた。
それは、30年前のサマホール警察内にあった、「裏バイブルの聖人たち(セインツ)」と呼ばれる秘密結社のような警官たちのグループが捜査の過程で行っていたさまざまな不正行為である。
当時の警察は、令状なしの捜索、脅し、暴力、取引など、起訴~有罪に持ち込めるようなら、なんでもあり、だったのだ。

30年後の今、一事不再理の規則が緩和され、過去には有罪に持ち込めず、無罪放免となっていた殺人犯を再び捜査できることになったのだ。その陰にはサマホールのセインツたちが絡んでいたらしい。
その中心人物だった警部は、退職して成功した実業家となっている。
その部下たちも、引退しているが、再捜査の手が伸びるとあって、戦々恐々としている。
リーバスも新人としてその端くれだった。下手をすれば、リーバスの身分も危うくなる。仲間を裏切ることになるのか…。

こうして、1件の自動車事故と30年前の警察の不祥事と、ふたつの事案の捜査が絡み合いながら進んでいく。

イアン・ランキンのリーバス物といえば、なんとなく煤けたエジンバラの街並みとスコットランドの鉛のような曇り空を思わせる重苦しい雰囲気が漂っていたと思うのだが、しばらくぶりに読むと、心地よいテンポで話が進んでいくことに感心した。
シボーンやリーバスが勤務するゲイフィールド・スクエア署の刑事たちが、煙たい上司の裏をかいてリーバスらをあ・うんの呼吸で助けるのも面白い。
なんとなくテレビドラマを見ているようだ。

ちなみに、スコットランドでは、ドラマ”Rebus”が放映されており、シリーズ1と2はジョン・ハナーが、シリーズ3からはケン・スコットがリーバスを演じて、どちらがよりリーバスに近いかという論争が起きたようである。fbvscoela71si7mir72a Rebus.jpghttps://drama.uktv.co.uk/shows/rebus/
私はDVDでハナーのリーバスしか見たことがないが、ハナーはリーバスにしては線が細すぎ、若すぎて重厚感に欠けるように思った。
写真だけではケン・スコットに軍配が上がりそうだが、一度見てみたいものだ。
nice!(0)  コメント(0) 

フィールドワークについて考える [本とテレビ番組]

私の大好きな上橋菜穂子さんの名作『精霊の守り人』が、3月に4回にわたってNHK総合で放送されるという。主演の女用心棒のバルサを演じるのは綾瀬はるか。
NHKのサイトhttp://www.nhk.or.jp/moribito/)を見ると、そうそうたる面々が出演している。

上橋菜穂子さんの作品は、豊かな想像力に支えられて
読む者をファンタジーの世界にぐいぐいと引き込んでいく。
ファンタジーといっても単なる空想ではなく、リアリティにあふれていて、
どれも骨太な物語となっている。

なぜなんだろうと思っていたら、上橋さんが文化人類学者で実際に海外でフィールドワークを行った経験があると知ってなるほどと思ったことがあった。

そして最近、ちくま文庫の『隣のアボリジニー小さな町に暮らす先住民』という本を見つけた。
単行本は2000年に、文庫でも第一刷が2010年に出版されていたのを気づかなかった。

この本は、1990年に西オーストラリアのミンゲニューという小さな町で3年、オーストラリアで足掛け9年暮らしたときの体験をつづったものだ。
表向きは小学校で日本について教えるボランティア教師として赴任したのだが、実は文化人類学者の若き学徒として、アボリジニの文化を研究するためのフィールドワークをすることが目的だった。

アボリジニとは、オーストラリアの先住民という意味の英語である。
(2年前にカナダに行ったときには、カナダの先住民もアボリジニと呼んでいた)
だが、実際には250以上(方言も含めると600以上)もの、まったく通じない言葉を話す集団に分かれているのだという。
しかも、白人との混血も進んで、みかけはアボリジニとはわからない人たちも大勢いる。

今でこそ、「多文化主義」や「多民族の共生」といった言葉が理想として語られるオーストラリアだが、長いこと「白豪主義」と呼ばれるアングロサクソン中心の排外的政策をとっていたことは有名である。
国内的にもアボリジニに対する政策は隔離政策から融和政策まで時代とともに変遷し、アボリジニたちはふりまわされてきた。
その結果、伝統文化を守っている集団はわずかとなり、多くは伝統文化から切り離され、かといって白人たちと同じような経済的豊かさや文化を享受することもできずにいる。
文化的虐殺とでもいおうか。
文化を失うと、個人はアイデンティティを失ってしまうのだ。
おそらく、世界の、そして日本のあちらこちらで、規模こそ違え、同じようなことが起きてはいないだろうか。


上橋さんの文化人類学者としての最初の狙いは、アボリジニの生き方や文化を、生活をともにするなかで観察していこうということだった。
しかし、そのねらいを隠して、人々の中に入り、受け入れてもらうとき、親しくなればなるほど、自分は彼らをだましているという思いにさいなまれる。
また、裏も表も見えてくると、相手が嫌になったり、逆に思い入れが強くなりすぎてしまい、客観的にものが見れなくなってしまったりする。
いったい自分が何をしようとしているのかが、分からなくなることもある。

研究者としてしばしば経験するジレンマである。
そうした初学者としての経験から、徐々に人々の懐に入っていき、自分なりのスタンスを見つけていくプロセスが、アボリジニの不思議な習俗に関する記述とともに語られていて、研究の教科書としても貴重だ。

といっても、さすがに物語の名手、上橋さんならではである。
親しくなったアボリジニ一家の一人一人を生き生きと描き出していて面白く、
アボリジニのたどった運命だけでなく、一人一人の人生の物語が浮き上がってきて、
彼女の創り出す物語のリアリティの源は、こうした経験にあるのだということが納得される。

分厚い本ではないが、内容はとても濃い。
池上彰の解説もついている。
テレビも見なくちゃ。





nice!(0)  コメント(0) 

アイスランドって不思議 [本とテレビ番組]

暗い・寒いの風土の影響が強いアイスランドのミステリだけれど、もう一つ、独特の伝承(サーガ)が豊かに残っている国というイメージがある。
サーガとは、歴史や民族、家族の来歴などが語り継がれた伝説の物語。

ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン『フラテイの暗号』も、
西アイスランドのフィヨルドの湾に浮かぶ小島、フラテイ島に伝わる「フラテイの書」にまつわるミステリ。
文庫の扉には「癒しの北欧ミステリ」と書かれているが・・・。

このフラテイ島というのは、首都レイキャビクから遠く離れた過疎の島だが、風光明媚な場所として有名で、いくつものアイスランド映画がここで撮影されているそうだ。最近では、ハリウッド映画のロケ地にもなっているとか。

舞台は1960年代。
アザラシ猟のため、祖父と父とともに無人島に上陸したフラテイ島の少年が見つけたのは、死後かなり経過した男性の死体。どうやらこの島に漂着し、助けが得られないまま餓死したらしい。
死体のポケットには、名前と意味不明の文字が記された紙切れ。

本土の地区役場から死体を収容するために派遣された地区長代理のキャルタンが、フラテイ教会の会衆代表グリームルと共に犠牲者の身元を調べると、デンマーク人の著名な大学教授であることがわかる。

ここから、中世からさまざまに伝わるサーガを編纂した羊皮紙写本、「フラテイの書」にまつわる謎が明らかになっていく。古い図書館におさめられた「フラテイの書」の写本。
その研究に生涯をかけた父と娘の物語も、この小説の1つの柱。

島の人々の人間関係を調べながら、大学教授の謎の死を追究するキャルタンとグリームル。
その話が日を追って語られるのだが、毎日の記述の後に、「フラテイの書」に記されたサーガにまつわる問いと答えがついている。
最初は何だこれは?と戸惑うが、何となくこの物語の呼吸というか、リズムというかをつかむと違和感は減っていく。
でも、この全部で40あるという問いが謎かけのようになっていて、答えは毎回一文字を示すことになる。
それを並べて、さらにヒントとして差し出される奇妙な暗号のような図柄とを組み合わせると、何らかの答えになるらしい。

もとはアイスランド語。ドイツ語訳から訳したとあるが、答えのアルファベットは、日本語に訳した場合のあいうえおに置き換えると、最終的にどうなるのだろう・・・と気になる。

なにしろ、いつものように頭を悩ませられる名前のややこしさの上に、このサーガの謎がからみ、いかにもアイスランドって感じの小説だが、最近、経済的に成功したかに見えたアイスランドが、一気に経済危機に陥った背景に、変わり者のアイスランドの文化が影響しているという文章を読んだ。

それを裏打ちするような、テレビ番組も観た。
クレイグ・ファーガソンというタレントが司会する『The Late Show』という番組に、ヤン・ナールというアイスランドの元レイキャビク市長が出演したのだ。

この元市長。両腕に大きな青い刺青をしていて、若くてエネルギッシュな男性だった。
元はパンクロックのミュージシャンンで、スタンダップ・コメディアンでもあるのだという。(日本のどこかの知事だった人みたいだ)

彼が、首都レイキャビクの市長に立候補をしようと思い立ったのは、アイスランドが金融危機に陥って、IMFの介入が不可避となったとき。
IMFが介入するとどうなるかと、人づてに聞いていくと、どうやらアートなどの予算は最初に削られるらしいと知ったのがきっかけだという。

自分のような人気者が何とかしなければと思ったのだという。それで、「ベスト党」という政略もマニフェストも何もない政党を立ち上げ、Facebookで有志を募り、立候補にこぎつけたのだそうだ。
彼は、この党のことを「政治的なセルフヘルプグループ」のようなものだと語っていた。
集まった人に、この党の政策を聞かれて、逆に「あなたはどうしてほしい?」と聞き返し、「正直な政治」という答えが返ってきたので、「では、正直な政治にしよう」という具合で、キャンペーンを張ったという。
「公約は実現するとはいえない」と公約したらしい。

そんなハチャメチャな選挙運動を繰り広げて当選し、4年間市長を務めてそこそこ成功したというから面白い。将来、アイスランドの大統領はどうなんだ、とけしかけられていた。

ハチャメチャでも動きがあることが、なんともうらやましい。
アイスランドの火山のようにふつふつとわきたるエネルギーが、アイスランドを支えているのかもね。
日本も同じく火山国なんだけど・・・。

nice!(0)  コメント(0) 
本とテレビ番組 ブログトップ
メッセージを送る