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意外な作家の闘病記 [本のはなし]

このところ、身の回りに予期せぬ出来事が相次ぎ、とくにこの1週間はあたふたしているうちに時間が過ぎてしまった。
朝も6時台に目が覚めて、なんだかボーっとしている。
しばらくはまだ落ち着かない日々が続きそうだ。

  ☆ ☆ ☆

先月小倉に行ったときに知った郷土の作家たちの作品を一人ずつ読んでいるところで、今日紹介するのは、加納朋子さんの『無菌病棟より愛をこめて』(文春文庫)。
『ななつのこ』や『七人の敵がいる』など、好きな作家のひとりである。

『無菌病棟』は、その加納さんが、なんと『七人の敵がいる』を書いた直後に急性白血病を発症した、その闘病記なのである。
そんな大変な体験をしていたなんて全く知らなかったので、書店でこの本を見つけたときはびっくりしてしまった。

この本で、夫も同業者だとあって、調べてみたらなんと、推理作家の貫井徳郎だった。これまたびっくり。
売れっ子作家同士で結婚して子どもまでいて、二人ともたくさんの作品を次々に発表しているなんて、すごい。
そこに急性白血病だなんて。しかも、厄介なタイプのものだったらしい。

だが、なにしろ、作家である。
たとえ重篤な病気であっても、興味津々、しっかり観察し、情報を集め、書いてやろうと意気盛んである。ちゃっかりと主治医に将来の取材の約束まで取り付けている。
それだけではない。患者としてうろたえる姿も、放射線治療や化学療法の苦痛にあえぐ場面も、リアルにとらえて描写している。
(巻末に、彼女に骨髄移植をした弟の詳細な体験レポートも載っている。)

それは、作家としての性というだけではない。自分の体験を伝えることで、同じような苦しみや恐怖を体験している人の助けになればという気持ちなのだ。
彼女自身、無菌病棟に入院して出会った患者同士のコミュニケーションにたいへん助けられた経験があるからだ。
実際、私の身近にも癌と告知され、これから入院・手術を待っている人がいるので、事細かに入院に必要な物品、不要な物品などを書いてくれているのはありがたいことだった。

その一方で、かつて40歳そこそこで急性白血病で逝った友人のことを思い出し、ああ、こんなことを知っていればやってあげたのに、なんで何もしてやらなかったんだろうと、後悔の念も湧いた。

加納さんは、もともとポジティブ志向の人なのだろう。苦しい治療に耐える(病気に耐えるのではなく、というのが、こうした悪性新生物の厄介なところだ)ために、入院中も歩いたり、階段昇降や腕立て伏せを繰り返したりして体力を維持しようとする。
また、体力と体重を維持するために、治療の副作用で味覚異常が起きて食欲がなくても、吐いても食べられそうな食品を探しては無理にも食べようとしたり、呆れられるほどの頑張りようなのだ。
彼女は、そうした頑張りのおかげで、回復したと信じているのだが、読者(たぶん患者の家族だろう)から、頑張っても駄目だった人もいる、そういう人は頑張りが足りなかったというふうにとれる書き方はひどいとお叱りの手紙をもらったそうだ。

それにしても、治療の過酷さはすさまじい。癌細胞をやっつけるために、致死量の薬を投与されるなんて、想像を絶する。

彼女の場合、骨髄のすべてが完璧にマッチし、さらに若く体格もよい弟からの骨髄移植が可能であったという幸運もあった。
夫や義母、父や姉妹の熱心な協力も万全であった。
さらに言えば、高額な治療費や部屋代を払える経済力もあった。これは夫が貫井徳郎と知れば、そのくらいは出せるだろうなと納得するが、知らなかったときは、どうするんだろうと他人事ながら心配になった。それくらいかかるのだ。

さらに治療が功を奏して寛解状態になったとはいえ、100%健康になったとはいえないようである。

この本を読んだおかげで、たまたま郵便局の人が勧誘に来たので、さっそくがん保険に入った。女性特約付き。
我ながら、影響されやすい・・・。

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