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アート小説というジャンル [本のはなし]

原田マハさんは前にも取り上げたことがあったと思うが、今回は『デトロイト美術館の奇跡』。
マハさんお得意の名画シリーズ、アート小説というらしい。
帯に「アメリカの美術館で本当に起こった感動の物語」とある。

折しも、上野の森美術館で「デトロイト美術館展」を開催中。
そちらを見てからブログに紹介しようと思っていたのだけれど、この分では行けるかどうかわからないので、紹介してしまうことにした。

デトロイト美術館に所蔵されているセザンヌの<マダム・セザンヌ>がこの本のテーマ。
デトロイトといえば、自動車産業で栄えた都市。
自動車産業とともに衰退した都市でもある。

第1章は、その自動車工場に長年勤めたアフリカン・アメリカン、フレッド・ビルと妻のジェシカの物語。つましい生活の中で、デトロイト美術館(通称DIA)に行き、この小さな<マダム・セザンヌ>の肖像画を見ることを楽しみに生きてきた人たちである。

第2章は、ロバート・タナヒルの物語。フレッドと対照的な大金持ちで、若い時からヨーロッパ美術の有名なコレクターだったが、やはり<マダム・セザンヌ>をこよなく愛し、豪邸のリビングにも飾っていた。死後、その多くをDIAに寄贈し、モダンアートの「ロバート・タナヒル・コレクション」として有名になる。

第3章は、DIAのキューレーター、ジェフリー・マクノイドの物語。やはり、<マダム・セザンヌ>を愛し、そのために故郷から遠いDIAに勤めたほど。膨大な「ロバート・タナヒル・コレクション」のカタログを製作者である。
ところが、自動車産業の破綻により、デトロイト市も財政破綻し、破産が決定的となる。
その穴埋めとして、DIAのコレクションの売却計画が持ち上がる。

そのとき、フレッド・ビルが訪ねてくる。そして、いかに今は亡き妻や自分がここのコレクションを愛してきたか、この絵画こそが友であったこと、もっとも「気の合う友人」が<マダム・セザンヌ>であることを語る。

そして、第4章はデトロイト美術館の<奇跡>。
いかにしてDIAは生き延びたのか。 

そして、今、上野の森美術館でDIAのコレクションが見られるというわけだ。
これは見に行かないわけには行かないではないか。
それに、これだけ近く(歩いていける)に美術館があるのだから、
フレッドのように、ちょくちょく絵画に会いにいってもいいではないか。

と思ったわけ。

ただ、気になったことがあった。
この4章からなるそれぞれのセザンヌ愛が語られているのだが、当の絵に対する3人の感想が、同じようなのだ。
たとえば、どっしりした構図なのに、どこかしら軽やかさを感じる。
服の青は単純な青ではなく、ほんのりとバラ色が混じって、まるで朝焼けの空をまとったようなやわらかさと清々しさがある。それは夫人の頬のほんのり差したバラ色と見事に呼応している・・・。

それほど惚れ込んだ絵画なら、それぞれがそれぞれの言葉で表現できるはずではないか?
まるでカタログの文言をそのまま引用したように、表現するなんて…。

せっかくの名画に傷を見つけたみたいに、残念な気持ちになった。
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