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英国王室漬け [こんなことあんなこと]

ハリー王子の結婚やエリザベス女王の即位60周年記念で、BS放送では英国王室ものの番組が目白押し。

なんたって驚いたのは、エリザベス女王が自分が戴冠した王冠について語るというインタビュー番組。
御年92歳というから、母が亡くなった年より1歳年上。
その割に、頭はクリアだし、目は生き生きとしてユーモアはあるし、感心してしまった。

その王冠に触れられるのは、女王と結婚式を執り行ったカンタベリー大司教だけだというのだが、
その王冠を前にして、その重さやたくさんの宝石の謂れを説明したり、細かいことまでよく覚えているのだ。
母なんて、認知症とは診断されていなかったけれど、「あらそう、そんなことあったっけ」ということが多くなっていた。

女王は、王冠をくるくる回してみながら、これを私だけは触っていいのよ、とインタビュアーの男性に、いたずらっ子のような顔をして言った。
そして、この王冠がとても重くて、少しでも下を向くと、首の骨を折るか、王冠がずれて落ちてしまうかだったので、誓いの文書もまっすぐ立てて読むしかなかったと、ユーモアたっぷりに話した。
25歳のときのことだ。今では英国史上だけでなく世界でも最長在位の君主となった。最高齢でもある。

ところで、エリザベス女王の陰に隠れて夫であるフィリップ殿下については、私もよく知らなかったのだが、なんと恋愛結婚なんだそうだ。
フィリップ殿下はもとはといえば、ギリシャとデンマークの王子で、第二次世界大戦中にギリシャから英国へ亡命した外国人だったのだ(とはいえ、ヨーロッパの貴族はみなどこかで血がつながっているのだが)。
戦時中エリザベスは従軍し、軍用トラックの運転手をしたりしていたのだそうだが、二人はダートマス海軍兵学校で出会い、一目ぼれだったという。

だが、フィリップの姉がナチスと親しかった貴族と結婚したせいで、英国では二人の結婚に反対する人も多かったという。フィリップはギリシャ正教会から英国国教会へ改宗し、英国へ帰化。
エリザベス21歳のときに結婚した。

なので、ハリー王子がメガン・マークルと結婚するのもさほど新しいことではなかったのかも。
彼女のようなしっかり者が、お調子者ハリーの手綱をしっかり引いてくれる方が、女王も安心かも。

ところで、メガンの母親はソーシャルワークの修士号をもち、心理療法士として働いているという。
ヨガインストラクターという情報もあるが、50歳を過ぎて大学院に行ったというから、働きながら勉強したのだろうか。

一方、彼女が6歳の時に離婚した父親は、ハリウッドの映画会社に勤める有名な照明技師。
アルコール依存症らしいから、しっかり者の妻と依存症の夫という共依存の典型的なケースかも。
ハリーとメガンがその轍を踏まなければいいけど。
どっちもAC同士みたいなもんだからね。
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週末の顛末 [こんなことあんなこと]

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先週末、札幌で学会があった。
数日前から北海道がいかに寒いかという情報が駆け巡り、最近の暑さでしまい込んだ冬物を引っ張り出したり、てんてこ舞いだった。
当日朝も、早朝覚醒しあたふたと衣類を取り替えたりして出かけた。
ホテルに着いてみると、置いてきたはずの衣類が入っているし、入れたはずの下着が入っていなかったり…。
でもこれが結果的に役に立ったのだけど。

金土の二日間、札幌は素晴らしい五月晴れ。
気温は20度前後だが、日が当たるところを歩いていると汗ばむほど。
(あつい下着を着ていたせいもある)

学会初日は発表者が体調不良で欠席したこともあり、早めにホテルに戻り、
着替えて懇親会に出かけることにした。
そのとき、前日着ていたはずの上着が室内に見当たらず、フロントに電話して清掃の人などに問い合わせてもらった。
だが、ゴミ収集場を見てもなく、もしかしたらシーツを交換した中に紛れ込んでいるかもしれない。でももう業者は終業時間が済んでおり、連絡がつくのは週が明けてとなるということだった。
前日食事に行ったお店にも電話してみたが、そんな忘れ物はないとのことだった。
忽然と、上着が消えた!まさに密室事件?
仕方なく、置いてきたはずだがなぜか荷物に入っていた服を着て(ここで役立った)、出かけた。

で、懇親会場で実行委員の一人にひょっとして忘れ物に上着が届いてなかったかと、期待はしていなかったが聞いてみた。
すると、それらしき上着が届いているという! なんとFBにアップまでされて?
友人に聞くと、そういえば前日の食事のときには上着を着ていなかったよという。早く言ってよ!
といっても本人が覚えてないんじゃ、他の人を怒るわけにいかない・・・。

翌朝、会場で無事に上着を受け取り、ホッとしたのもつかの間…。
早朝ミーティングで、衝撃的なニュースがもたらされた。
学会の理事も歴任されたこともある、会員(女性)の一人が前日ホテルで急死されたというのだ。
あまりのことに、言葉も出なかった。
ちょうど1年と1ヶ月前、実家の母が自宅で急死したのと状況が似ていて。

この学会、何かが起こる。
6年前は京都でのプレコングレスの最中にかすかな揺れを感じたのが、東日本大震災の揺れだった。
東北方面からの参加者は帰宅するのに3日もかかったと後で話していた。

学会最後の閉会式の冒頭で、残った会員にことの次第を伝えた。
自分ではあまり動揺しているとは思っていなかったのだが、声が震えてしまった。

帰りは余裕をもって19時30分発の便にしてあったので、札幌空港でアスパラやななつ星(お米)を買いこんだりした。
そして、夕食のお弁当を買ってチンしてもらい、さて食べましょうと椅子に座って念のため、チケットの予約控えを見てみた。
すると、な、なんと、出発時間が18時30分となっているではないか。
時計をみると、18時20分!
慌てて荷物をひっつかみ、保安検査場に走った。
こうなると札幌空港は迷路のよう。お店が入り組んでいて、なかなか見つからない。
一瞬、JALとANAを間違えそうになりながら、ようやくたどり着いたら、知り合いの顔も見えた。
よかった!
入ってわかったのだが、乗る便の航空機の到着が10分遅れて、出発も10分遅れになっていたのだった。そうでなかったら、と思うとぞっとする。

で、私のトンデモ事件はこれで終わったのだが、私より1時間早い便で帰京した人の話によると、
東京上空の天候がとんでもなく悪く、着陸を何度も繰り返し、1時間も旋回していたそうだ。
結局3時間かけての到着となったという。
その人とたまたま浜松町駅で一緒になり、結局私の方が先に帰ることになった。
そんなこともあるんですね。
ちなみに、私より1時間遅れの便は関東上空で45分旋回の予定と告げられていたそうだ。
出発が10分遅れただけで済んだ私はラッキーだったみたい。

3日間海鮮物ばかり食べていたら、体重は増えたのに、身体年齢は出発前より2歳も若返っていた。
終わりよければすべてよし?
亡くなった方には申し訳ないけど。

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最近の海外ミステリードラマで気になること [テレビ番組]

ケーブルテレビの海外ミステリー番組の新シリーズが相次いでスタートする。
ミステリーじゃないけど、以前NHKでやっていた『This is us 36歳 これから』も。
吹き替え版なのが残念。

新シリーズが始まる直前には、過去のシリーズを一挙放送されることが多い。
これはわかるしありがたいのだが、
最近、新シリーズも、スタート前になぜか一挙放送する。

それでそれを全部録画して、ついつい一挙に見てしまう。
ゴールデンウィークはどこにも出かけないので、一日中、ボーっと見ている。
しかも1.3倍速で見るものだから、あっという間に新シリーズ全回を見終わることとなる。
これって、何のためなんだろう。
あらためて正規放送時に見る人が減ると思うんだけど。

最近みた中では、BBC-1"のIn the Dark"という全4回のドラマが面白かった。
過去にトラウマを抱えたマンチェスターの女性刑事ヘレンが主人公なんだけど、
これが妊娠していて、臨月の大きなおなかを抱えながら捜査しているのだ。
しかも、ギャングが銃をもって抗争している一帯で。
しかも、おなかの子が付き合っている同僚ポール(結婚していない!)の子なのか、たまたま寝た相手アダム(こちらも警官!)の子なのかがわからない!

子ども時代の親友の夫が幼児誘拐の容疑者となったため、親友を助けるために、ヘレンはポールと一緒に故郷に戻る。
そこで過去のトラウマが蘇る…。
浮気相手に結婚を迫られ、ヘレンはポールに子どもの親がどちらか分からないと告白する。
この浮気相手アダムを演じているのが、ヨーク警察が舞台の『ヴェラ』の最初の若い相棒だった、ハンサムボーイのデイビッド・レオン。最近は映画の監督などもやっているらしい。

ポールはヘレンに怒りをぶつけ、二人の仲は険悪に。
ここから二人の仲も、捜査も、混乱の中へ突き進む。

たった4回なんだけど、ストーリーは2転3転して、ハラハラドキドキ。
なにせいつ破水してもおかしくないような、巨大なおなかを突き出して
町中を捜査のために歩き回るんだから。
こういっちゃなんだけど、ヘレンを演じるMyAnna Buring (マイアンナ・バーリング)は、そう美人というわけではない。
スウェーデン生まれの中東育ちという変わり種なのだが、有名なLondon Academy of Music and Dramatic Art(LAMDA) を卒業した筋金入りの女優さんである。

英国のドラマに出てくる俳優さんは、このヘレンやポールなど、いわゆる定型的な美男美女はあまりおらず、本当にちまたにいそうな顔立ち、体つきをした、それでいて個性的な人ばかり。
『This is us』の主人公の一人はものすごくふくよかな女優さんだしね。
(これはアメリカのドラマだった。間違えました。でも、アメリカの女優さんはなぜみなロングヘヤー?)
それに比べると、日本の若い女優さんたちはお人形さんみたいで、みんな同じに見える。

でも、最近の海外のミステリードラマや小説には、けっこう妊婦の刑事が登場して、ハードボイルド並のアクションをこなす。はやりなのかしら。

それにしても海外も日本もそうだが、やたら女性が犯人というのが多いような気がする。
(このドラマは違うけど・・・そのくらいのネタバレは許される?)
どこの国でも凶悪犯罪を犯すのは、女性よりも圧倒的に男性が多いのに。

日本でも女性が凶悪犯罪(しかも連続殺人など)を犯すと、毒婦だのなんだのとマスコミがえらく騒ぐので、多いと思われているのかも?

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代打で現場復帰 [こんなことあんなこと]

4月からさる大学の特任教員として勤務している。
1昨年、教員をしていた大学院の後輩が講義中に倒れ、まだ職場復帰できないでいたことから、助っ人として非常勤で学部の授業を数コマ引き受けていた。
2年たったところで、あと1年、大学院や委員会業務などもやってほしいとの依頼で、週3日、月12日の契約で引き受けることになった。
通勤時間が20分ちょっとということが、引き受けた重要ポイント。

大学を定年退職してから、もう大学は十分やったと思って個人営業を始めたのだが、ここへきて思いもかけない現場復帰である。
自営業のほうも兼業するが、私としては「社会復帰」といった感覚。

おまけに同じ看護系の大学とはいえ、初めての組織に勤めるのは戸惑うことばかり。
これまでいろいろな職を経験してはいるが、新人オリエンテーションを受けたのは一番最近で28年前のこと。会議の会話にもついていけない。みなさんとても早口で、よく聞き取れなかったりする。これは年のせいか。

3週目にようやく保険証がもらえ、4週目にしてようやく職員証がもらえた。
この間、免許証もパスポートももたない私は、身元を証明するものが何もなく、
病気になったり事故を起こしたりしないようにと、まるで難民になったような気分だった。

週3日のはずが4月はあれこれ忙しく、実習病院の打ち合わせなんかにもでかけたため、14日出勤することになり、5月に調整することになった。

それでも学部生の卒研や修論のゼミなどはやはり面白く、つい張り切ってしまい、1週目にしてどっと疲れが襲ってきた。
なにせ、院生が社会人なのでゼミも夜間開講なのだ。
会議も昼休みに(早口なのは、時間がないせいみたい)。

おかげで昼食や夕食を食べるタイミングが分からず、朝、パンを2食分買っていくが、おなかがすく。
もともと、普段の生活ではあまり空腹感やら食欲やらを感じない質で、
前の職場では、お昼を食べたらその後は何時間も食べたり飲んだりせずに仕事をして、気づいたら夜の9時だったなんてこともあったのだが、ここへきてやたら感じるようになった。
珍しく間食にお菓子を食べたりしている。
あれやこれやまだ混乱していて、集中できないせいかもしれない。

とにかく前の職場のことをあまり持ち出さないこと、1年しかいないのであれやこれや口出ししないことを肝に銘じているのだが、これがなかなか難しい。
あと2日でやっと4月が終わる…。



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弥勒シリーズ第6弾 [本のはなし]

通勤ということをしなくなると、途中で本を読むことがなくなり、ぐっと読書量が減った。
自宅にいればいつでも読書すればいいではないかと思われるかもしれないが、
自宅ではもっぱらビデオに撮ったテレビドラマ(たいていは海外ドラマ)を1.3倍速で観て過ごしている。
なぜか本を読む気がしないのだ。

この4月から週3日勤務するようになったのだが、通勤時間がなんと20分。
乗車時間はわずか9〜11分。読む時間はない。
本を読むのは、もっぱら夜寝床に入って眠くなるまで。せいぜい30分。
なかなか進まない。

でも、あさのあつこ弥勒シリーズの最新作『地に巣くう』(光文社時代小説文庫)は、一気に読んだ。
一気に読まないと、登場人物の人間関係がわからなくなるということもある。

壮絶な過去をもつ小間物問屋遠野屋清之介と、彼に強い興味と敵愾心をもつ北町奉行所定町廻り同心、木暮信次郎、それに岡っ引きの伊佐治親分が絡むのはいつもの物語なのだが、
今回はなんとしょっぱなから木暮信次郎が何者かに襲われ、腹を刺されるという衝撃的な事件が起こる。
しかも、その後、大川にあがった屍体が、信次郎を襲った男であることが判明する。

今回は、20年前に病死した信次郎の父親、先代の同心、右衛門の衝撃の過去をめぐる物語である。
これまで衝撃の過去といえば、清之介のものであって、信次郎はいわば先代の同心のぼんぼんのような立場で、性格に難はあっても謎や影はなかった(はずだった)。
だが、この事件をきっかけに、信次郎は亡き父の真の姿を明るみにだそうと、遠野屋清之介に助力を頼む。
といっても、素直に頼んだわけではないのは、いつものこと。
善人と信じられてきた父親は、ほんとうはとんでもない悪人だったのか。
先代の同心、右衛門を尊敬してやまない伊佐治親分は、先代の過去を暴こうとする信次郎に反発する。

これに、遠野屋の二番番頭信三が出先でたまたま見つけた、腕の立つ半襟職人とその一家や、信次郎が襲われる前に会っていた、両国の両替商のお内儀などとのからみが、徐々に右衛門の過去のなぞと結びついていく。

それにしても、清之介に対する信次郎の執拗な関心はいや増すばかり。
清之介もまた、自分の過去を何とかして暴こうとする信次郎に抗えないものを感じている。

表面だけみると、性格のねじくれた同心と正直でまっとうな商人の二人が、実は根は似た者同士であるということが繰り返し繰り返し語られるのだが、そのしつこいまでの叙述に、もういいよ、わかったよと言いたくなってきた。
あさのあつこさんは、どうしてここまでそれにこだわるのだろう。
その疑問は、この先、この物語はどこに行き着くのだろうという疑問ともつながっている。







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男親の気持ち [本のはなし]

年下の友人が、直木賞をとった門井慶喜の『銀河鉄道の父』を読んで、「父親ってそうだよなあとつくづく思った」と言った。
本人は二人の子をもつ父親。
「そうだよなあって、どんななの?」と聞いてみたが、答えがはっきりしない。
何とも言葉では言えないらしい。

私の父は分裂気質の研究者であったから、親子と言ってもあまり親密とはいえない関係で、亡くなって6年が経つ今、父親がどんな気持ちを抱いていたのかは、知る由もない。

しかも、姉と私の娘二人だったから、これが息子だったらどうだったのだろうという興味もあって、読んでみた。

これは宮沢賢治の父の、そして宮沢賢治自身の人生を描いた小説である。
宮沢賢治に関する研究はたくさんあるようだが、私自身はこれまでほとんど読んだことはなかった。
ただ、保育園で初めて働いた時、子どもたちに何か絵本を読んであげてと先輩保育士に言われて、『セロ弾きゴーシュ』を読んだ。
今、青空文庫で読んでみると、年少児にはとんでもなく難しい物語だったとわかる。
その先輩は、「それは私も好きな物語」と言ってくれたが、それは私の誤った選択をなぐさめてくれたのだろう。

それはともかく、
この小説の最初の章は「父でありすぎる」というタイトルである。
まさにこれがテーマなのかもしれない。
とにかく子供に対する愛情が人一倍強く、憲治や妹が病気になって入院すると、泊まり込んで寝ずに看病し、下の世話までやるような父親なのである。
そのせいで自分が病気になり、一生腸に悩まされるようになるのだが。

その一方で、父親たるもの、男たるものこうあるべしという社会規範にとらわれてもいて、その思いを口にはできず、自分を戒めているのである。

憲治自身も妹トシに対して熱い愛情を注ぎ、トシが病で入院した際には泊まり込んで看病し、下着までも洗った。

この本がいいと言っていたあの友人も、こんなにあふれるほどの愛情に苦しんでいるのだろうかとふと思う。

とにかく、葛藤だらけの人なのである。
一つは、質屋と古着屋という家業についての葛藤。
父はその仕事の傍ら、地元の文化人として全国から有名な講師を招いて講習会などを催したりしていた。どこか自分の家業を恥じているところがあったようだ。
それでいて、自分がそう親に言われたように、憲治ら息子にも「質屋に学問は必要ねえ」といって大学に行かせまいとする親なのである。
ところが、結局は息子ばかりか娘までも、質屋の仕事を嫌い、親に逆らって大学に進む。
実際に、父も子どもたちも、とんでもなく優秀だったらしい。

父は浄土真宗の熱心な檀家なのだが、憲治はその父からもらった本がきっかけで日蓮宗に帰依して、熱狂的ともいえるほどの信徒となる。
何につけ、東北人とは思えない(これは偏見!東北人だからこその)熱い思いを抱えた人たちである。

小説家はともすれば重苦しくなりかねない悲劇的な憲治や父、妹たちの人生を、独特のリズムでつづっていく。

それにしても、私にとって男親というものは、永遠の謎かもしれない。

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英国人はモースがお好きーなんでなんだろう [テレビ番組]

英国の人気TV番組「主任警部モース」の原作者コリン・デクスターが今年3月21日、このドラマの舞台でもあるオックスフォードで亡くなった。86歳だった。

このドラマ、英国では1987年から2000年まで放映されており、コリン・デクスター自身、ヒッチコックのように自分の作品にカメオ出演するのが好きで、30回も出演しているのだという。
私もときどき彼を見つけてニヤリとしたことがあった。
ただ、シリーズの終わりのほうでは、いつもモースが事件の関係者である女性を好きになり、それがたいてい犯人だったりするパターンにまたかという気になった。

そのモース役で英国アカデミー賞を2回受賞し、大英帝国勲章(CBE)も受賞したジョン・ソウは、2002年に食道癌で亡くなっている。60歳だったというから、ずいぶん若くしての死だったわけだ。

その後、この作品のスピンオフ『オックスフォードミステリー・ルイス警部』がモースの部下だったルイス警部を主人公に作られ、2006年から放映されている。
私は、このシリーズではルイスの部下ハサウェイを演じたローレンス・フォックスの大ファン。
オックスフォード警察で働く、ケンブリッジ大学神学部卒でミュージシャンという、屈折した役を演じるフォックスについては、このブログでも取り上げたことがある。

このシリーズが続いている傍ら、英国では2012年に単発の『刑事モースーオックスフォード事件簿』というもう一つのスピンオフドラマが放映された。
モースの新米時代を描いたこの作品は、翌年からシリーズ化された。
日本でもNHKのBSプレミアムで、毎週土曜の午後4時半から午後6時の時間帯に放映されている。
http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/trailer.html?i=13370
時間帯が時間帯なので、ビデオに撮ってみているが、なかなかよくできている。

このドラマ、舞台は1965年のオックスフォード。
原題は”Endeavour”。「努力」という意味の英語だが、モースファンならすぐわかるだろう。
彼が誰にも言いたがらない本名なのだ。

若かりし頃のモースを演じるショーン・エヴァンスは痩せているし、ジョン・ソウには似ていないと思ったが、何回も見ているうちに、大きな目がジョン・ソウに似ているようにも思えてきた。
この60年代という、ビートルズが台頭した時代にあって、モースはすでにクラシックとくにワグナー好きな変わり者として、周囲から馬鹿にされていた。
だが、優れた観察眼と天才的なひらめきで事件を解決に導いていく。
あの才能は経験と時間で培われたものではなかったのだわね。
「栴檀(せんだん)は双葉より芳(かんば)し」なのであります。

それにしてもモースがこんなにも英国で人気なのはなんなのだろう。
英国ではシャーロック・ホームズよりも好かれる探偵なのだそうだ。

私は一度だけオックスフォードのリトルモア病院という精神科病院に見学に行ったことがあり、到着が遅れてホテルが見つからず、職員宿舎に1泊だけ泊めてもらったが、オックスフォードはケンブリッジよりも大きな都会だった。
リトルモア病院では、肩より長い金髪をたなびかせた若い男性師長にびっくり(うっとり)したものだった。
ドラマの中にも、リトルモア病院の名前がときどき出てくるのだが、たいてい字幕ではカットされている。

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人間の暗部を描くスウェーデン・ミステリ [本のはなし]

北欧ミステリの中でもスウェーデン・ミステリは、「マルティン・ベック」シリーズで有名なマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーを始め、日本でも長く人気を誇っている。

その二人の後継者と目されているのが、
アンデシュ・ルースルンドと ベリエ・ヘルストレムのコンビである。
以前にもこのブログで『制裁』を取り上げ、2人の特異な経歴を紹介した。
http://sendagi-sennsei.blog.so-net.ne.jp/2008-01-17
詳しいことはそちらを読んでいただくとして、
今日紹介するのは、『ボックス21』(ハヤカワ文庫)。
『制裁』から続くグレーンス警部のシリーズは、全世界で500万部を超えるベストセラーとなっている。

本書が刊行されたのは2005年ということだが、なんと著者の一人、ヘルストレムは今年2月17日にガンのために永眠したという。享年59歳。
かつて服役したこともあるというから、身体的にも不健康な生活だったのだろうか。

冷夏のストックホルムで起きた2つの事件が、グレーンス警部を巻き込み、やがて深刻な問題を引き起こしていく。
一つは、アパートの一室で、鞭で打たれ意識を失った売春婦が無残な姿で発見された事件。
もう一つは、ヘロイン依存症の男が覚せい剤に洗剤を混ぜて売り、多くの死者を出してマフィアの怒りを買った事件。

グレーンス警部は覚せい剤事件の背後に、宿敵ヨッフム・ラングがいることを直感的に気づく。
だが、ラングはグレーンス警部の手で逮捕され、服役中。
これまでなんども逮捕されているが、証人を脅して証言させないため、刑を逃れていた。
刑務所内でも服役囚をてなずけて、出所後に犯罪の手引きをしていた。

一方、むごたらしく鞭打たれた姿で見つかったのは、リトアニアから人身売買でやってきた娼婦リディアだった。
彼女はストックホルム南病院に運び込まれたことで、2つの事件が結びつく。
病院に勤める女医の弟が、ラングにてなずけられたジャンキーだったのだ。
ラングは、姉に薬をせびりに来た弟を病院で銃殺して逃げる姿を姉の女医に見られてしまう。
やってはならないミスだった。
グレーンス警部は今度こそ、きちんとした証人を立てて、ラングを有罪にすることができると喜ぶのだが…。

一方、病院に運び込まれたリディアは、逃げだした仲間のアレナと密かに連絡をとり、これまで計画して準備してきたあるものを駅のロッカーから取り出し、病院に持ち込むように頼む。
それは銃と爆薬。
リディアは、それをもって病院の地下の遺体安置所に人質をとって立てこもる。

被害者がなぜ、今になって犯罪者になるのか?
しかも、要求はグレーンスの長年の同僚ベングトをよこせということだけ。
なぜなのか…?
人質が一人殺され、若い研修医が膝を撃ち抜かれるにおよび、ベングトがその要求に応じざるを得ないことになる。

…と、ここから先は、ネタバレになるので書けないのだ。
グレーンスの深い懊悩。
これまでの警官としての努力がまったく無になるような事態。
さらに、グレーンスに疑惑を抱く長年の同僚スヴェン。

帯に「ラスト3行、心をえぐられる。」とあるが、
最終章は、事件の3年前にさかのぼって、物語をなぞるような短いエピソードが重ねて示される。
そして、最後の3行というのが、最後の1ページなのだ。
で、思わず、えっと前のページを見直してしまった。

人身売買というスウェーデンの、というより人間の暗部。
その犠牲となる女たちの苦しみ。
貧困と憎悪の中で薬物依存にはまる人間。
犯罪と戦いながら人を傷つけ、自らも傷つく警官たち。

最初のほうの娼婦の物語を読んでいるときには、気持ちが暗くなり、読み続けることがなかなかできなかった。
だが、途中から本を置くことができなくなり、睡眠不足に…。

スヴェンがグレーンス警部に語る次の言葉には、う〜んと考えこんでしまった。

「罪悪感は、他人になにかをしてしまったときに抱くものだ。自分に対して何かをしてしまったとき、人は恥の意識を抱く。罪悪感には耐えられる。恥は耐えがたい」

かつては罪悪感の西洋人、恥の日本人という対比がよくされたが、
そう単純なことでもないというのが最近の認識となっているのだな。
それにしても、こんなミステリにさえ、それが出てくるなんて。



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地球の自転が早まってない?公転か? [日々の出来事うっぷんばなし]

このところ、本当にあっという間に1週間が経ってしまう。嫌になるほど。
家にいると、1日の時間はさほど短くなったとは感じないのだけれど、
1週間、1か月が驚くほど速く過ぎていく。
ということは、自転の速度じゃなく、公転速度の問題?

今日のうっ憤話は、時間のことじゃなくて。
たまたま散歩がてら、隣駅のスーパーまで足を延ばした時のこと。
赤札堂です。はい。

ここはものすごく古い建物で、駅そばの交差点の好立地ながら、いまどき3階建てで
エレベーターもなく、お年寄りは階段の下に、買い物カートを置いて
えっちらおっちら階段を上っていく。

売り場も狭く、その割に客は多いので、1階の食料品売り場など、
レジが2列、それぞれタテに2つずつ並んでいる。
通りも狭くて、1列に並んで、前のレジが開くと、次に並んでいる人から前を超えて進んでいく仕組み。(わかりにくい?)

それで、その日も結構混んでいて、私のすぐ前には年配の女性、その前にそれよりちょっと若いと思われる男性(私と同世代?―この時間にスーパーで買い物しているくらいだから、同じく定年退職組?ー)が並んでいた。

で、前のレジの清算が済んで、次が空きそうだったのだけれど、私の前に並んだ人たちが動かなかったので、気づかないでいるのかと思い、「前のレジが空きましたよ」と声をかけた。
でも、年配の女性も、前の男性もなぜか動かない。
ちょっと声を大きくして「行けますよ」というと、
前の男性が振り向いて「いいんです」という。
で、「前が空きましたよ」と繰り返し言うと、手前のレジに待っている別の女性のほうを意味ありげに目をやり、「わかってますよ。」という。
その女性が動かないから、自分は動けないのだということ?

でも、その女性はすぐそのレジが空くので、後ろの人が行ってもいいのでは?
そう言ったのだが、その男性、「わかってますから、余計なことは言わないでいいですよ」と、後ろの年配の女性にも同意を求めるそぶりを見せながら、なんだか人を馬鹿にしたようなにやにや笑いを浮かべて言う。
さも、私がここのやり方を知らずに余計なことを言っている人みたい。

頭にきて、「声をかけただけなのに、『余計なこと』って何なんですか!」とつい声を荒げてしまった。
さらに「もう20年もこの店を使っているんですからね!ここの並び方くらい知ってますよ」と言ってやりたいと思ったが、それはぐっとこらえた。

久しぶりに怒りが爆発しそうになった。と、いうか、爆発してしまった。
「怒るおばさん(おばあさん?)」だな、こりゃ。

実はよく、講義の中でよく紹介する「怒るおじさん考」という事例があるのだ。
新聞の読者の投書欄に載っていたエピソードで、投稿したのは定年退職した男性。
土曜の午前中に病院を受診しようとして、車の渋滞に遭い、
着いた時にはすでに窓口が閉まっていたという話だ。

その瞬間、そのおじさん、「薬が切れて、死んだら責任をとれるのか!」と怒鳴りだしたというのだ。
しかも、そのときそれがいかに理不尽な怒りであるかということも、周りの冷たい視線も意識していたという。

そのおじさんは、今となっては「穴があったら入りたい」ような気持ちだというのだが、
こう反省している。

「現役をリタイアすると人間関係のストレスがなくなる代わりに、自分が社会から必要とされていないという思いも強くなる。体のあちこちに故障が生じ、入れ歯の不具合が拍車をかけ、感情を平静に保つのがなかなか難しくなる。」

私は入れ歯はまだないし、「自分が社会から必要とされていない」とも思わないけれど、どうも「感情を平静に保つのが難しい」というのは、年のせいなのか。

普段はストレスフリーの生活をしていて、不整脈も高血圧もすっかり良くなり、主治医からは薬を止めましょうかと言われているくらいなんだけど、
どこかにたまっているものがあるのかもね。

それにしても嫌な奴だった…。(書いてスッキリした!)






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『銀漢の賦』 [本のはなし]

暖かくなったかと思ったら寒くなり、おまけにこの季節には珍しい風雨で洪水……。
一体、地球はどうなっているのやら。
相模大野で午前中の仕事があり、私としては珍しく6時半ごろに起床して出かけた。
千代田線で代々木上原で小田急線に乗り換えれば、1時間弱で到着する予定だったのだが、日比谷まで行ったところで、なんと後続の電車が途中の駅で急病人の救助を行ったために運転間隔調整が必要、ということで5分停車。
代々木上原の接続も、寒いプラットフィームでかなり待つはめに。
ところが午後、帰りも車両点検とかでやっぱり遅れ。
日本の交通システムはかなり老朽化してしまっているのではないか?

と、話は飛んで。
昨年12月23日に亡くなった葉室麟の『銀漢の賦』を読んだ。
2005年に54歳でデビューして2年後の2作目がこの作品。
松本清張賞を受賞している。

銀漢の漢は川という意味。銀漢は天の川のことをいうのだそうだ。
西方の小藩、月ヶ瀬藩の群方・日下部源五と家老にまで上り詰め、「月堂」という号をもつ文人としても名を馳せた松浦将監、この二人は、同じ普請組の子弟として、同じ剣道場にも通った幼い頃からの親友だった。
そして十蔵。2人が剣道場からの帰りに偶然ぶつかったことから親しくなった村の子どもである。
この3人が夏祭りの夜、見上げた空の天の川に感嘆していた際に、漢詩では天の川を銀漢というと将監が教えたのだ。

日と月と星。
この物語は、少年時代から頭に霜を置くようになるまでの、3人の漢(おとこ)の物語である。

源五は居合と鉄砲の名手だが、藩の財政を立て直すための新田開発になくてはならなかった雲居川の井堰工事に、妻も子供も顧みず献身的に働き、妻を病で亡くしてしまう。

源五と将監は、少年時代にともに覚悟をきめて斬り合いの場にのぞみ、命を賭して戦ったことがあるほどの親友であった。
だが、ある事件をきっかけに断絶し、将監はやがて学問ができることが認められて、遠縁の名家の婿養子に入ったことから出世の道を登り始める。
実は、将監の父は江戸で不覚の死を遂げていた。
この死の裏に、藩の政争があったことがのちに明らかとなる。
だが、その将監も家老となり、藩を我が意のままに牛耳る存在となりはてたのか…。
源五はそれを疑っている。

十蔵は成人してのち、村人の一揆を煽動したかどで、家老となった将監により刑死してしまう。
源五は十蔵の亡き後、その妻と娘を引き取る。

この幼い頃、親友だった3人が、それぞれの人生を歩みながら、ときに敵対し合い、それでも心のどこかでつながっている。
葉室麟お得意の涙を誘う友情物語でもある。

時代小説は、現代社会を下敷きにしているようなところがあって、そのあたりが松本清張賞受賞の理由でもあったのだろうか。
でも、それから10年経って、ますますその色彩は濃くなっている。

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